13年目のやさしい願い


「もう、邪魔しないから」



邪魔? カナとのことだよね?



「……うん」

「陽菜ちゃん、倒れた時、オレは棒立ちなのに、広瀬先輩、ムチャクチャ的確に動いてて、少しも動揺してなくて……。

正直、叶わないって思った」

「……あ、カナは慣れてるから」

「幼なじみなんだよね」

「うん」



その時、一ヶ谷くんのポケットで電話がブルブルっと震えた。



「ごめん。……はい、一ヶ谷です」



電話に出た後、一ヶ谷くんはわたしを見て、ニッコリ笑った。



「すみません。まだ、ちょっと駅のトイレです。

2回途中下車したんですけど、どうも調子悪くて。

大丈夫です。遅れますけど、ちゃんと行きますから。

はい。ありがとうございます」

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