13年目のやさしい願い


一ヶ谷くんが電話を切ってポケットに入れるのを合図に、目を合わせて、2人でクスクス笑った。



「担任。……そろそろ行かなきゃダメかな?」

「そうだね」



時計を見ると、一ヶ谷くんが来てから、ずいぶんと時間が経っていた。



「来るのが遅くなって、ごめんね。

土日は面会謝絶って出てたし、その上、いつ来ても、広瀬先輩いるし……。

病院には何回も来たんだよ」

「ごめんね」



カナがいたら、話しにくいよね。きっと。

篠塚さんの話はともかく、わたしとの出会いのことなんて。



「だから、陽菜ちゃんが謝ることじゃないでしょって。

オレが勝手に来てるだけなんだから」



一ヶ谷くんは、また苦笑いした。

< 353 / 423 >

この作品をシェア

pagetop