13年目のやさしい願い
一ヶ谷くんが電話を切ってポケットに入れるのを合図に、目を合わせて、2人でクスクス笑った。
「担任。……そろそろ行かなきゃダメかな?」
「そうだね」
時計を見ると、一ヶ谷くんが来てから、ずいぶんと時間が経っていた。
「来るのが遅くなって、ごめんね。
土日は面会謝絶って出てたし、その上、いつ来ても、広瀬先輩いるし……。
病院には何回も来たんだよ」
「ごめんね」
カナがいたら、話しにくいよね。きっと。
篠塚さんの話はともかく、わたしとの出会いのことなんて。
「だから、陽菜ちゃんが謝ることじゃないでしょって。
オレが勝手に来てるだけなんだから」
一ヶ谷くんは、また苦笑いした。