13年目のやさしい願い


「……沙代さんのお料理は、プロ級だし、確かに絶品だものね」



思わず助け船を出すと、ママはそうよねと嬉しそうに笑う。

それから、ふと真顔になった。



「ねえ、……いったい誰の教育? 陽菜、あなた、人間が出来過ぎよ」

「え?」



「出されたものは感謝していただく……まあ、基本だと思うんだけどね。

その伝え方なんかも押しつけがましくないし、フォローも絶妙。

他にも、どんな時にも、ありがとうを忘れない、すぐに、ごめんなさいって謝れる。

昔から物欲はないし、

ワガママ言って、周りを困らせることもない。

どんなツライ検査でも、文句一つ言わない。

どんなに身体がツラくても、愚痴一つ言わない。

出来過ぎでしょ!?」



ママは一気にまくし立てて、それから、ハーッと息を吸うと、ごくごくとお茶を一気飲みした。

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