13年目のやさしい願い
「陽菜、落ち着いて聞いてね」
ママが話し始める前から、鼓動が早くなる。
おじいちゃんか、おばあちゃんに何かあった?
……もしかして、パパ?
まさか、お兄ちゃん?
ドクン、ドクンと、心臓が脈打つ音が聞こえる気がした。
「叶太くんがね、」
……え?
カナ?
思いもかけない名前を耳にして、
周りに聞こえていたあらゆる音が遠くなった。
だって、今から話すのは悪いニュースなんでしょう?
……なんで、カナが?
心臓の拍動が、一気に強くなった。
ぞくりと、嫌な感触が背中に走った。
「少し前に、交通事故で救急に運ばれてきて」
カナ!
思わず立ち上がろうとしたら、ママに肩を押さえられ、もう一度、座らされた。
「意識がないから、」
その言葉を聞いた瞬間、全身から血の気が引き、目の前が真っ暗になった。