13年目のやさしい願い


「陽菜!」



ママに支えられて、

差し出されたママの腕にしがみついて、

ようやく、わたしはイスの上に留まっていた。



ママの腕を掴んでいるのに、手のひらに掴んでいるはずの白衣の感触はなくて、

ママの声は確かに聞こえているのに、言葉としては認識されなくて、

ようやく戻った視界も、まるで夢の中で見るような現実味のない世界で……。



「陽菜、落ち着いて」



……どうやって?

落ち着くって、なに?



「大丈夫だから。

頭は打ってるけど、CTの結果、出血も骨折もなかったから。

脳震盪だと思うんだけどね」



ママがわたしの顔を覗き込んで、一言一言、丁寧に告げる。

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