On Your Marks…~君と共に~
あたしはゆっくりと体をおこし、急いで勝木に悟られないように涙を拭った。
かすかに見えた勝木の顔には、光るものがあった。
「そのあと、俺の家には、いたずら電話が鳴りやまなかった。”なんでお前だけ助かったんだ””お前はなんで助けに行かなかったんだ””2人の夢をどうしてくれるんだ””人殺し””お前にはもう走る権利はない”
言われて当然だと思った。俺がやったことは人殺し。俺にはもう走る権利なんてない。
俺はもう走ることを許されていないんだ。
あの尾川っていうやつの言う通りなんだ。
本当は」
そうやって、1人で悩んできたんだこいつは。
自分が悪いって、言い聞かせてきたんだ。
だけど、あたしは…
「あんたは悪くない」
そう、あんたは何も悪くない。
あたしの頬をまた一滴の涙が伝う。
「……は?」
勝木は、鼻ですこし笑っていた。
「走ったらダメな選手なんて、この世に1人もいない。あんたは走っていいんだよ。っていうか、走らないといけない」
「……」
勝木はまた下を向いたまま、うんともすんとも言わない。
だけどあたしは構わず話を続けた。