私と彼と――恋愛小説。
高笑いして恭子が電話を切った。悔しいけれど話せる相手がいる事は心強いのだ。


わかっている…私は恋愛が下手で佐伯にも、その前の男にも振りまわされた。


相手だけが悪いのではない…きっと過度に依存してしまう私にも問題はある。


杏奈に言われた言葉が浮かんだ…佐伯との事で随分迷惑を掛けていた頃の事だった。


『加奈子はさ、男と付き合うと考え方まで持ってかれるんだよね。自分のスタンスがズレちゃうんだ』


そうなのかもしれない。今だって、佐久間の事で頭がいっぱいになっている。バランスが悪い…


少し冷静になる。こんな風に佐久間に聞きもせず、食事を作り待っている自分が嫌になってしまう。


「ごめんなさい、まだ忙しいよね？」


「大丈夫だよ。着くのは十時ぐらいになりそうだけどさ…良いかな？」


「それは良いですけど、何か食べてくる？食べて来ないならご飯作るけど？」


「良いの？最高に嬉しいんだけど」


あまり期待しないでね、そんな風に佐久間に告げて電話を切った。


こんな単純な事でモヤモヤとしなくて良いのだ。仕事なら当たり前の事が恋愛だと出来ない…それが私の欠陥なのだ。
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