恋ごころトルク
 千里さんも、大型二輪の教習は終盤に来ていて、前も言っていたけど、重さにやられているらしい。誰も一緒だなぁ。

「あたし、自転車で練習したよー。一応ねぇ」

「あ、あたしも自転車で練習したり、あとは原付で練習しましたよ」

「原付持ってるの?」

「あ、いえ……知り合いが、練習につき合ってくれて……」

 知り合い。光太郎さん。バイクショップ・ミナセのスタッフさん。赤いつなぎの、背の高い人。時々、うちのお弁当を買いに来て、買っていくのはいつも、豚しょうが焼き丼。


「凄いね、優しいなぁ」

「そうなんですよ……優しいですよね」

 あたしの、好きな人。


 注文したセットが2人分、テーブルに来た時だった。救急車のサイレンが近付いてきて、ミナセの前に止まった。どうしたんだろう?

「なんだろうね……あ、ここじゃん」

 身を乗り出して、窓の外を見ている千里さん。ここは2階。ちょうど真下に救急車が止まっている。なんだろう、お客さんで急病人でも出たんだろうか道路で事故があった形跡は無いし、来る時もなんとも無かった。

「隊員出てきたよ、担架持ってる」

「なんでしょう……事故かな」

 白い制服の救急隊員達が、担架を持って移動していく。

「あれ、店に入って行くけど」

「……?」

 カフェのスタッフさんも「なんだろうねー」とか言いながら、窓の外を見ている。あたしも身を乗り出して、状況を見守った。

 しばらくすると、担架に人が乗せられて出てくるのが見える。運ばれていく。赤い……つなぎ。男性で……。

「……光太郎さん?」

 大きな音を立てて椅子が倒れた。あたしが急に立ち上がったからだ。

「真白ちゃん?」

 うそ、光太郎さん。担架に乗せられて、救急車に運び込まれて行く。なんで、光太郎さん? どうしたの? あたしは目が良い方だ。目を閉じて、顔色を失って……。

「ちょっと、ごめんなさい。あたし行ってくる」

「どうしたの? 知り合い?」

 千里さんがびっくりした顔をあたしに向ける。知り合いもなにも……。

「……大事な人!」

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