恋ごころトルク
*
ミナセのスタッフさんから聞いた話はこうだ。
体調が優れないと言っていた光太郎さんは、作業中、ふらついて倒れそうになった。寄りかかったのが長い脚立で、それが自分の方に倒れて来て、下敷きになったそうだ。
「あれくらいの脚立が倒れてきたからって、自分まで倒れるなんてな。余程具合悪かったんだろうな。頭とか打ってないと良いんだけど……呼びかけに答えないしぐったりしてたから、救急車を呼んだんだ」
救急車が病院へ到着したと、店長から連絡が入った。行ってから、どれくらい時間が経っただろうか。待ってる間、心拍も呼吸も乱れていて、まるで激しい運動でもした後の様で。
運ばれた病院へ、スタッフさん2人とあたしの3人で向かうことになった。千里さんは置いてきてしまった。あとで謝らなくちゃいけない……。
想像するだけで、容態は分からない。重体かもしれないし、何か別な病気が見つかるかもしれない。骨折してるかもしれないし、かすり傷だけかもしれない。
想像は悪い方ばかりへ行ってしまう。関係者でも身内でもなんでもないのに、スタッフさんが一緒に病院へ連れて行ってくれてるこの状況も、よく分からない。
「あの……あたし、行って良いんでしょうか……」
「なにを今更……」
「連れていけって凄い剣幕で」
「すみません……」
サクラクックへお弁当を買いに来てくれたスタッフさんが運転をしている。もう1人のスタッフさんは、会ったこともない人で、彼からしたらあたしは「誰……?」状態だろうと思う。
ショップのものなのか、誰かの車なのかも分からない。搬送先の病院へ、車で向かっている。運転席と助手席にスタッフさん。あたしが後部座席。
スタッフさん2人は、仕事のことやこれからのことなどを、よく分からない状況ながらも考えているみたいだ。真剣な顔で話をしている。結局のところ、「全てが分かってから」というところに落ち着いたみたい。あたしは邪魔にならないように、後部座席で静かに聞いていた。