恋ごころトルク


 しばらく走ると、見覚えのある白い建物の前に来た。このへん、通ったことがあったし、そう言えば救急病院だったなと思い出した。

 ウインカーを出して、駐車場へ入る。広い駐車場の埋まり具合は7割ってとこだろうか。

「受付んとこに店長が居るらしいから」

 駐車場に車を入れ、車を降りると3人で小走りに病院入口へ向かう。

 外来なのか付き添いか、お見舞いか。受付の前に広がる待合いスペースには人がけっこう居る。長椅子がずらりと並べられて、たくさん人が座っている。ざわざわした音が胸に響く。大きな病院だもんな。

 人をかわしながら、受付を目指す。こんなところに運び込まれるなんて、余程の重傷なんだろうか……。そして、人の合間に、椅子に座る店長を見つけることができた。キョロキョロしている。

「店長!」

 スタッフさんの声に気付き、店長はあたし達を認めた。手招きしながら自分から歩いて来る。

 店長の深刻そうな顔を見て、心がびくつく。ああもう、心臓がはちきれそうだよ。

「店長、光太郎は……」

「いま病室で眠ってる。とにかく行こう」

 眠ってるのか。あたし達がここへ来る間、処置はもう済んだのだろうか。

「すみません……あたし動転してて。関係無いのに来てしまいました」

「連れて行けって、凄い剣幕で」

 ……それ、さっきも聞いたんで。……すみません。

「ああ、まぁ、こういう時は人が多い方が安心でしょう」

 店長は少しほほえんで、そう言ってくれた。強引に来てしまったけど、あたしになにが出来るだろうか。迷惑極まりないよね……。

 白く長い廊下を歩き、エレベーターに乗って、3階へ向かう。ゴンゴンという音が不安を増幅させる。ヘルメットが入ったリュックが邪魔だ。店長の手元を見ると、ビニール袋を下げている。なにか、買い物をしてきた様子だ。

 エレベーターを降り、また廊下を歩いて行くと、店長が「ここだ」と立ち止まる。病院は、奥へ行くに従って、人が少なくなる気がする。なぜだろう。

 名札が2枚掲示されていた。「霧谷 幸太郎」とある。幸太郎じゃなくて光太郎だよ。名前の字が間違えている。

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