恋ごころトルク
店長とスタッフさんが宥めてくれる。あんまりこんな風にしてたら怪しまれるし、光太郎さんにも後々迷惑がかかる。こんなことを言ったらアレだけど……あたし光太郎さんの彼女なわけでもないし、むしろ振られたんだし。だから、あたしはなんでここに居るんだって話ですよ。ほっとしたら頭が冷静になってきた。
「あ……あたし、帰ります。安心したんで、1人で帰れますから。すみません、ご迷惑をおかけして、身内でもないのに。帰ります。すみませんでした……」
これ以上居たら、迷惑になる。あとは店長とスタッフさんにお任せしよう。気も使わせてしまうし。ティッシュで涙と鼻水を拭いながら、あたしはリュックを抱えて、病室を出ようとした。
「あのさ、俺達は帰るから、見ててくれない? 店の番号と……あと俺の携帯教えて行くから」
そう言ったのは店長だ。なに、意味が分からないんだけど。そして、店長から名刺を渡される。え、ちょっと。どういうこと? あたしは名刺と店長の顔を二度見した。だから合計4回。……そんなことはどうでも良い。
「ですよね。俺達、店に戻らないといけないし、仕事あるし」
「だよなぁ」
「……へ?」
「いやあ、君が来てくれて助かった」
「あの」
あたしを残す方向で、ミナセスタッフ3人は納得しているようだ。顔を見合わせて、頷き合っている。
「怪我も手だけだしね。まぁ手は整備士の命だけど、安静にしてれば治るものだし。熱も薬飲めば下がるし」
「ほら、光太郎も起きた時に誰も居ないんじゃ寂しいだろうから、ね。俺達を助けると思ってさ」
ね、じゃないよ。
「ちょっと」
「とりあえず、水分置いていくわ」
店長は、ずっと持ってたビニール袋をサイドキャビネットへ置く。下の売店で買っていたみたいだ。中身はペットボトルのお茶だ。
あたしは名刺を受け取った手のまま、挙動不審にカクカクしてる。なんで、どうして。
「帰りのタクシー代は光太郎に請求してね」
「じゃ」
「あの」
しーっと人差し指を立てながら、店長とスタッフさんは病室を出て行った。
「うそ……」
病室に、健康な女1人。
残されたし、1人残されたし! なんてことだ……。いくら怪我が軽いからって帰ること無いでしょうが。全然関係無いあたしが、なぜ残された。
自分で来ちゃったんだけど……乗せてけって言ってな……自業自得でしょうか。