恋ごころトルク
「か、看護師さん呼びましょう」
「いいよ。あとで」
「……はい」
掴んだナースコールを、静かに離した。
「なんで、居るの?」
「……すみません」
「店に居たの?」
「はい。カフェで友達とお昼ご飯食べてて。そうしたら救急車が来て。あたし……心配で。強引に連れてきて貰っちゃいました」
「……」
ほら。光太郎さん困ってるじゃない。目覚めたんだから、あとは店長とスタッフさんに連絡して、帰らなくちゃ。
「光太郎さんが目覚めたら、連絡してくれって言われて、店も心配だし仕事もあるからって、店長とスタッフさんは帰りました」
「そうか」
「あたし、頼まれていたので連絡しておきますね」
「……ん」
リュックのポケットに、名刺はしまってある。ここから出たら、電話をしよう。そうすれば、みんな安心する。
「あと、帰ります。あたし」
顔が見られない。目を合わせられない。さあ、あたしの役目はここまでだ。荷物を持って、出て行け。長居する必要は無い。
「こ、光太郎さんが無事で、あ、指にヒビ入ってるけど、酷い怪我じゃなくて、良かったです。安心しました」
パイプ椅子を畳んで、リュックを肩にかける。
さあ、さようならを言って、病室を出ろ。それで、終りにするんだ。
「いままで、迷惑かけちゃいました。ごめんなさい」
1人にするのは、少し心配だ。でもここは病院。呼べば誰かが来てくれる。あたしが居る必要は無い。
「……お大事に、してくださいね」