恋ごころトルク


「……バイクの後ろに乗せてくれる約束は、まだ有効ですか?」

「指が治ったらな」

 早く治して、元気になって。

 畳んだパイプ椅子をまた出して、座ろう。座って、1回落ち着こう。なんか、凄い展開になってきているような気がする。

 ガタガタやってると、光太郎さんが「ねぇ」って手招きする。

「ちょっとほら、俺、動けないから、少し……こっち来て、屈んで」

「……? こ、こうですか?」

「もうちょっと、この、頭のてっぺんが痛くて……」

「こ、……お」

 頭の後ろに手が回って、ぐっと引き寄せられる。唇に、柔らかな感触。

 右手と熱以外はなんともないはずなのに。動けないなんて。嘘ばっかり。

 頭の後ろにあった手が、背中から腰に移動して、もっと引き寄せられた。そのまま上半身が光太郎さんに乗っかるような体勢になってしまう。

「い、痛くないんですか?」

 ヒビが入ってるのは指だけど、それにしたって、あんまりこの体勢は、ねぇ。病人に乗っかってるわけだから。

「良い別に。痛くたって」

 もう一度、キス。少し乱暴で、甘くて、泣きそう。少し大胆になったあたしは、パジャマの下の、彼の肌をまさぐる。

 ここだよね、ここにある赤いあれ。触ると温かい。光太郎さんの一部だもの、全てひとつだもの。あたしにも繋がる。一緒になる。

 強引なあたしにお似合いな、強引なキス。光太郎さんとの初めてのキスは、病院の匂いがした。


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