恋ごころトルク
 子供の頃からそうだった。この人ともう会えなくなるかもしれない。明日、大きな地震が来て、電車が止まるかもしれない。帰宅困難になって、家に帰れなくなるかもしれない。明日、地球が終わってしまうかもしれない。そうしたら、もうあなたと会えないかもしれない。

 あたしの中のたくさんの「かもしれない」は、きっと、無駄じゃなかった。

 この体だって、あと何十年かすれば、年老いて朽ちて無くなっていく。だったら……。


 想いを伝える。ありがとうと、ちゃんと言う。明日必ず会える保証なんか無い。さようなら、じゃあね、バイバイもちゃんと言う。友達にも、仕事関係の人にも。

 お父さんお母さんに、きちんとありがとうって、言う。順番からいったら、先に死ぬ人達。必ず、死んで居なくなる。


 好きな人に、好きって、ちゃんと言う。
 たとえそれが、実らなくても。

 当たり前のことなのに、人って考えで頭でっかちになって、素直になれなかったりして、難しい生き物だよね。

 明るい病室は、あたし達をふんわりとした光で包んでいた。

 あたしの下にある鼓動を感じる。あたしの鼓動もきっと伝わってるに違いない。動いてる。あたしの鼓動と一緒になって、グルグル回るよね。そして混ざって、きっと、離れられない。

 ちょっと熱があって、甘いキスは、涙が出るくらい、切なくて幸せなキス。



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