恋ごころトルク
「ま、乗ってるうちに分かるようになる……かな。自分で整備っていうか、こう、知っていこうと思えば」
「整備……ですか。ああでも、用語とか部品の名称とかは少し覚えないといけないなって思います」
詳しい人って凄いよね。なんでも自分でできるんだもん。パソコンとかもさ、自分で組み立てたり。バイクも車も、好きだと詳しくなるのかな。
「自分で整備してなんぼって考える人も居れば、ショップに丸投げする人も居るしね。自分でいじって壊すよりは良いかも」
「そうですね……あたし壊しそう」
絶対壊すよ。怖いからショップに任せるね。
「光太郎さんに任せます。バイク買ったら」
「おお、もちろん」
光太郎さんは立ち上がり、あたしに合図をする。
「さあ、もう1回キックしてみて」
「はい」
またエイプに跨り、キック。今度は1回でエンジンがかかった。なるほどね、コックをね……。キャブ車を買ったらこういう手順なわけだ。
光太郎さんは少し離れた場所にパイロンを持って行き、駐車の白線に沿って並べる。あそこをクランクに見立てるのかな。
あたしはスタンドを払い、真っ直ぐ光太郎さんの方へ行けるようにエイプを移動させた。パイロンを並べ終わって、光太郎さんが戻ってくる。
「あそこ、ちょっと違うと思うけどクランクとして、やってみようか」
「はい」
クランク進入、そして右折。それから左折。自動車学校と一緒だ。
「走れる?」
「たぶん……」
「ゆっくりでいいから。ちょっとくるっと走ってきてからの方が良いんじゃない?」
「そうですね。ちょっと慣らしてきます」
自動車学校でも、課題をやる前に先生の後ろを走って慣らし走行をするんだ。あまり遠くまで行かないように、駐車場内をくるりと回ることにした。
クラッチ切って1速。アクセルゆっくり……そろそろと走り出すエイプ。
「前見て」
光太郎さんの声。どうしても怖くて下を見てしまうんだな……。ゆっくり走り出して、駐車場を囲む金網越しにゆっくり右回り。右にしかハンドル切らないけれど、1週して光太郎さんのところへ戻る。
「じゃ、あそこやってみよう」
「はい」
簡易クランク。赤いパイロンを目指して、ゆっくり走り出す。