恋ごころトルク
「大丈夫、できるから」
もう、自動車学校の先生、光太郎さんやってくれないかな……そんなに優しく言われたら泣きそうだよ。
……でも、甘えてちゃいかん。
次はうまく通る。もうちょっと思いっきり行ってみよう。下を見ないで先に視線を。ニーグリップ。先生に言われたこと、光太郎さんに言われたこと。
ギアを1速に入れ、またそろそろと動き出す。ここが壁だ。がんばれあたし。できる。
「他の人に出来て、真白ちゃんにできないことなんか無い」
とどめの一撃を背中に放たれて、あたしはぎゅっとアクセルを開けた。
躊躇せずに左折合図からパイロンの間を通る。視線は前に、右に体を傾けて、ぐらついたら加速、スピード緩めて半クラッチ、左に傾けろ、ニーグリップしっかり。前を見ろ……。
「……っとお」
自分でも分かった。うまく行った感覚だ。そっか、そういうことか。
「できたじゃん、今の良かったよ」
「通れた」
「パイロン接触も無かったし、上出来だよ」
こんな小さなことだけど、まだ教習の先は長いけど、出来なかったことが出来た。それだけでこんな充実感。
「楽しい」
「出来るようになると楽しいでしょ」
「はい」
「二輪は楽しいよ。怪我だけ気をつけよう」
出来たことの嬉しさと、緊張の開放の相乗効果で、テンションが上がる。感覚が分かると出来る気がする。自信が付く。