恋ごころトルク
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「ではね、前回のクランクね、集中的にやってみましょう」
次回の教習まで自転車で復習しよう! なんて思ってるうちに仕事でバタバタして、結局なにもしないままで当日になってしまった。自動車学校に着いてから、自転車で気持ちクランクっぽくカーブしてみたりしたけど。こんなの練習にならないよね……。
本当は、教習を回数重ねると複数教習と言って、1人の先生につき2人か3人の生徒で教習を行うシステムだ。あたしは教習簿に「1人」と書いてあって、まだ1人教習。先生を独り占めだ。……なんて、自慢できないんだけど。下手ってことです。
今日は快晴だ。ニュースではどうやらこっちの方も梅雨入りの様子。晴れてるけれど、少しジメジメしてる。ヘルメットが暑い。プロテクターも暑い。
前回教習してくれた先生だ。毎回同じわけではないんだよね。普通免許の時もそうだったけど。
コースに出て、先生の後に付いて、慣らし走行から始まる。相変わらず走り出すまでがもたもたしてしまう。重いんだよぉ。走り出してしまえば結構大丈夫なんだけど。真っ直ぐ走るのは。
3周ほどしてから、クランク課題に移る。ここで停止して、という先生の合図。ゆっくりバイクを停止させ、隣に並んだ。
「目線ね、注意して、あと速度とニーグリップ。がんばってみましょう」
「はい」
「では発進してください」
左右の安全確認をして、発進する。直進から左合図の左折でクランク進入。前回とコース形状が変わってるわけが無いので、同じだ。前回と同じことをしっかりやるんだ。
「目線、下見ないで、半クラ、ニーグリップ。倒れそうになったら加速」
頭の中で、光太郎さんの声。あたしも、そのポイントを口に出して言ってみる。
「目線、下見ない、ニーグリップ……」
ブツブツ。言ってる間にクランクだ。来た。自動車学校のコースには魔物が住んでいる。(大袈裟)
合図、進入! 半クラでタンクを膝でしっかり挟め。バランス、右折……左折! おりゃあー!!
「……!」
やった……。接触も転倒も無く、スムーズにクランク出口を抜けた。やった。初めてだよクランク成功したよ。光太郎さん、やったよあたしやったよ! 今すぐ電話したい。
「うん、いいじゃない。今日は調子良さそうだね。はいじゃあもう1回」
「はい、やった……はい」