恋ごころトルク
「あの、味噌かかってるやつ。炒めたのでも良いな。あれ美味いよね」
「ああ、美味しいですよね。あたしも好きです」
茄子のメニューを提案してみようかな。光太郎さんが好きなら……茄子。
光太郎さんはお仕事の昼休みなんだろう。たまにここの公園でお弁当を食べてるのは知ってる。午後もまた仕事だろうし、あたしは休みで、自動車学校はもう終わった。
お天気が良い。バイク、乗れるようになってこんな陽気の日に走ったら気持ち良いんだろうな。
光太郎さんを見ると、彼もあたしを見てる。いつもの笑顔は無くて、あれは営業スマイルなのかもしれないけど、あたしは笑顔が見たいと思った。
「こっち来たら」
「自転車が」
「忙しいの?」
「いえ」
「じゃあ」
すうっと風が吹いて、バイクの教習でかいた髪の汗を乾かして行く。光太郎さんの髪も揺らす。
あたしは、自転車を柵にできるだけ寄せて止めた。光太郎さんのスクーターの後ろだ。公園の入口は……あそこ。背負っていたリュックを片方の肩にかけ直して、小走りで公園に入り、光太郎さんが座るベンチに近付いて行った。
「ひとりで飯食っても、つまんないし」
「……」
「お昼食べたの?」
「まだです。これから買い物して帰ろうかなって」
お昼、食べなくても良いかなって思ってた。疲れたし、教習が上手くいかなくて、気持ちも落ち込んでるし。
「あ、どうぞ。召し上がってください」
「ああ……」
思い出したように光太郎さんは豚しょうが焼き丼の蓋を取る。「いただきまーす」と割り箸を割って、勢いよく食べた。
こんな近くで、光太郎さんが食べるのを見るなんて。なんか……幸せ。ずっとこうやって見ていられたら良いのにな。このまま、隣に。
「……」
「……」
目が合ってしまった。じっと見てたから、光太郎さんがあたしの視線に気付いて、困った顔してる。
「……食う?」
豚しょうが焼きをひとつまみ、あたしの顔の前に差し出して来た。ええ、食うって……。
「いえ、すみません」
「じっと見てるから。腹減ってんだろ?」
「帰ってから、食べるので」
「そう?」
そう言って、またお弁当を食べ始める光太郎さん。またじっと見てしまう。そうやって食べるんだ。美味しそうに食べるなぁ。