恋ごころトルク
「光太郎さんてバイク、何に乗ってるのか知らないや」
「ゼファーっていうやつ」
なんだ……当たり前だけど、聞いたこと無い名前。あたしが知らないだけでしょうけれど。
「知らない」
「でしょうね」
「戦隊ヒーローが戦いを挑む悪役みたいな名前」
「なにそれ」
ハッハッハっていう光太郎さんの笑い声。
「カワサキのバイクだよ。ナナハン」
「ナナハン」
「750cc。……いいよ、詳しくならなくても」
750……あたしが取る免許では400ccまでしか乗ることができないから、そのゼファーは運転出来ない。
「バイク、好きなんですね」
「いろいろあってね。忙しいからなかなか乗れないけどね」
この間も言ってたけど、その「いろいろあった」って口癖なの?
突っ込んで聞いてはいけないような、そんな雰囲気を纏っている彼は、その視線は一体、どこを見ているんだろう。どこかを見てるその目を、横から見てるだけで、なんだかあたしは泣きそうになってしまう。
「免許取ってから乗るバイク、250か400かまだ決めてないんだろうけど、ちゃんとプロテクターとか準備した方が良いよ」
バイクに乗るからには、きちんとした準備をしたい。
また、風が吹く。公園の中を、あたし達の間を、太陽に温められた風が吹き抜ける。