恋ごころトルク
「光太郎、居るかなーって寄ったんだ。休みだってね」
変な笑いを止めて、タケさんが言う。
「そうみたいです。あたしも自動車学校の帰りに寄ってみたんですけど」
休みなんだから、居るわけが無いんだけど、店内を見渡してみる。
「ごめん。レジ行っておいでよ」
「あ、ごめんなさい」
タケさんに言われて、自分が買い物に来ていることを思い出す。会計前の品物をいつまでも抱えているわけにいかない。あたしは急いでレジにレインウエアを持って行き、会計を済ませる。
「すみません」
2人とも、待っていてくれてる。優しいなぁ。お出かけの途中なんだろうか。時間取らせてしまった。レインウエアが入ったビニール袋をガサガサと鳴らして2人のところに戻る。
外、雨は降っていないだろうか。ふと気になった。
会計を済ませて2人のところに戻る。今度はタケさんが「ちょっとスタッフに頼み事してくるね~」と、あたしと誠太郎さんを残して外へ出ていった。
初対面の人と、男の人となぜ待たせられなければならないのか。解せない……と思いながら、でも、光太郎さんの弟さんだと思うと、妙に興奮してしまう。
「あの」
「は、はいっ」
誠太郎さんの声が高いところから降ってくる。急に話しかけられたから、構えてしまった。
「兄貴と、友達ですか?」
「友達というか、あたしお弁当屋で働いてるんですけど、よく買い物に来てくれてて……」
「はは、そうだったんだ」
あたしの答えを大きく頷いて聞いて、合点がいったように表情が緩んだ。どういう知り合いかと気になったんだろう。
「タケさんとは、古くから?」
「いいえ、光太郎さんに紹介していただきました。ここで」
「そっかー……ごめんね。ふざけて見える人だけど、良い人だから、タケさん。ふざけてるけど」
「いえ、ふざけてるとは思ってませんけど……」
チャラいなとは思っています。
「兄貴、元気そうで良かった」
そう言ってにっこりする誠太郎さんは、やはり光太郎さんに雰囲気が似ている。じろじろ見るわけにもいかないから、程良くね……でも見ちゃう。
「会ってないんですか?」
光太郎さんは1人で暮らしてると言っていた。誠太郎さんはご実家に居るのだろうか。
「そうですね。電話ではたまに……兄貴は仕事が忙しい人だから」
「誠太郎さんはご実家に?」
「はい。結婚して子供居るんで」
わお。光太郎さんは甥っ子か姪っ子が居るんだ。凄いな、そうだったんだー! 新しい事実を知って、なんだかそれだけで嬉しい。単純。