調導師 ~眠りし龍の嘆き~
あれから始まったのね。

正直、私が人を愛せるなんて思ってなかった。


仲の良い両親を見ていても。

友達の恋愛話しを聞いても。

恋愛小説を読んでも。



実感なんて湧かなかったんだもの。



ありがとう。

愛する事を教えてくれて。

愛してくれて。

側にいてくれて。

私を伴侶に選んでくれて。



うれしかった。

悔いはないわ。

最期にあなたの側にいられて良かった。

あなたの想いが痛いほど伝わってきた。

今心は満たされている。

あなたの愛。

大切に持って逝くわ。

だから寂しくない。

この想いだけで充分。



ねぇ。

だから。

私の言いたい事分かる?



早く来ちゃだめよ。

あなたはお爺さんになるまで来ては駄目。

私が迎えに行くまで来ないでね。

来たら許さない。

追い返してやるから。

見張ってるから。



お願いよ……。



「お止めくださいっ!」

勢い良く開けられた襖。

ゆっくりと振り向く。

手間には刀を振り上げて切りかからんとする父の姿。

その奥から父を突き飛ばしてやってきた娘の姿があった。

「あい……り…」
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