調導師 ~眠りし龍の嘆き~
俺の中から父を消してくれ。

忘れさせてくれ。


悔しい。
悔しい。
悔しい。


あいつの存在を消し去ってくれ。

どうか。

どうか……。

「お父様…?」
「……なぜ……」

なぜ消えない。

どうして世界は、こうも残酷なんだ。

壊したい。

何もかも。

俺の頭を。

都合よく忘れられる薬はないのか。

今この瞬間に死ねたらどんなに楽だろう。

死んでしまいたい。

デリートできない記憶。

巻き戻らない時間。

やり直しのきかない世界。

リセットできたらいいのに。

あの瞬間まで戻れたら……。

取り返しのつかない現実。

もう悲しみなのか、怒りなのかも分からない。

感情が氾濫を起こしている。

壊れる音がする。

耐えられない。

こんな世界に居たくない。

「お父様っ?!」

ゆっくりと傾いでいく意識。

落ちていく感覚。


全てを忘れてしまいたい。


それだけが頭に残った。

声さえ届かない。

落ちていこう。

どこまでも。

変えられない現実に目を向けなければ良い。

捨て去ってしまえれば良い。



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