調導師 ~眠りし龍の嘆き~
温かい想い。

そして、強い力。

強い想い。

待ってろ。

今戻るから。

待っていてくれ。

すぐに行くから。

浮上していく感覚。

戻らなければ。

待っていてくれている。

瞼が重い。

目を開けるのにこんなにも苦労したのは初めてだ。

口を開く。

ゆっくりと。

乾いた唇が悲鳴を上げるけれど。

安心させなくては。

知らせなくては。

「……いり…ふじ……け…」
「お父様っ」

目を開けることが億劫だ。

けれど、見たい。

確かめたい。

早く。

ようやく開いた目。

焦点が未だに合わない。

「お父様っ。
わたくしがお分かりになりまして?」
「ああ……。
愛理…」
「……よかった…」

やっと視界が晴れた。

そこには、愛しい娘の姿。

涙を浮かべて、覗き込んでくる。

安心させたくて、頬を緩める。

笑みに見えるかは分からない。

目元を緩め、見つめる。

安堵した表情。

必死で呼んでくれていたのか。

けれど……。

「藤武は……?
声が聞こえたんだ……」
「…お父様……。
もう少し…。
待っていてくださいね」
「……?」
「今は、お休みください。
……あんまり心配させないでくださいね……」
「ああ……」
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