調導師 ~眠りし龍の嘆き~
目を閉じる。

眠っていたはずなのに、疲れている。

すぐに眠くなる。

気配がある。

すぐ側にいる娘。

けれど、確かに部屋に残るもう一つの気配。

そうだ。

知っている。

間違えるはずはない。

愛しい息子の気配。

居てくれたんだな。

ありがとう。

俺の愛しい子ども達。



「お父様?
ここにいらしたのですね…」
「……」

あの日、意識が戻ってから、もう動けるように回復した。

動けるようになってから、どうしても足が向いてしまう場所。

ここは兄の部屋だ。

あの頃と全く変わっていない。

誰も使っていなかった。

俺の部屋も。

この兄の部屋も。

そのままにしてある。

まるで、まだこの部屋の主が帰ってくると言うように。

「なぜ……」
「何です?」
「……なぜ、このままなんだ?
俺が出て行った時のままだ……」
「……触らないようにと…。
一族全員に通達を出したと言っておりました……」
「……誰が…?」
「…御祖父様ですわ……」
「っ……」
「まだ、その時わたくしは幼く、覚えてはおりませんけれど…。
御祖母様が話してくださいました。
わたくしもおかしいと思ったのです。
誰も使わない部屋…。
絶対に使わせなかったのです。
御祖父様が絶対に使わせないと……」

衝撃だった。

だが、なぜがかわからない。

父にとってみれば、形など何の意味もなさない。

部屋など、他の誰かに使わせればいいはずだ。

俺の知っている以前の父ならそうする。

忌まわしいと思うはず。

何も言わずに出て行った子ども。

痕跡など残しておくはずもない。

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