ストーンメルテッド ~失われた力~
「だから、忠告しただろう」
「あんなの、忠告なんかじゃ......」
その木がぶつかって来た衝撃で、飛空艇は地面に見る見る落ちてゆく。
「きゃー」
ジュノは、金切り声を上げた。
しかし、サンは上手く操縦をし、ギリギリのところ飛空艇は上空に上がっていった。
「......ふぅ」
そうして、サンは一息つく。
ようやく安定して飛ぶようになった飛空艇......ジュノも思わずほっとした顔になった。
「もう、こんなのはごめんだから」
そう言って、ジュノは大きく頬を膨らませて顔を真っ赤に染めた。
「はははっ。まぁ、いいじゃないか。飛空艇は無事に飛んでいるんだ」
そう言われると、ジュノはサンの顔を見詰めながら、ゆっくりと頬を元に戻していった。真っ赤になっていた顔も徐々に戻ってゆく。
ようやく、落ち着いたジュノは飛空艇から覗く外の景色を窓から見詰めた。
真横は、空、空、時々雲。
それだけだったので、今度は、下の方に目をやることにした。
すると......その景色は、絶景だった。
それは、ジュノがまだ知らないある森......そこには麒麟の親子が木の実を分け合って食事をしている様子が見える。
さらに、少し先に見える国は面白かった。
これ以上、大きな木は見た事がない。その巨大な何メートルにも上るであろうトルネコの木にはそれぞれいくつかの国、町に分かれているようだった。
その木の周囲に、シャボン玉のような大きく膨らんだ球体が張ってある。その巨大なシャボン玉で、木を守っているのだろう。
天上にある国、アースガルズは、木の葉の変わりに大きな国、町となっていた。
地下、木の根っこ部分のヘルヘイム帝国もしっかりと見えている。そこの木の根っこをかじり続けている恐ろしい姿の神獣、ニーズヘッグには鳥肌が立つものだった。 ニーズヘッグは、かじり続けて宇宙の根源を破壊し ようと企んでいる。 しかし、それを知った運命の神ノルン達は、かじられた部分を修復する仕事をするようになった。要するに、ニーズヘッグは無駄な事をしているのだ。
さらに、根の下には3つの泉、フヴェルゲルミル、ミーミル、ウルズがしっかりと見えている。
そして、その二つの国に挟まれた中央にある国、海洋に囲まれたミズガルズはアースガルズからかかっている美しい虹の橋ビフレストによってこの、二つの国は行き来が出来ているようであった。
ミズガルズの外側にも、もう一つ国、 ヨトゥンヘイムがしっかりと見えた。
すると、サンは口を開き言った。
「あの木は、ユグドラシルだ。俺の家」
今頃、オーディンはあの場所で、俺の帰りをただただ待っている事だろう......。
「そうなの?! ......凄いね。いいなぁ」
「あぁ、いいところだ。ヘルヘイム帝国を除けばな」
さらに、飛空艇は前進をし、景色はまた新しく変化をする。
そこは、砂漠に満ちた世界、オグドアド国だった。砂漠の砂で作り上げたと思われる二つの巨大な神殿は立派なものである。その砂漠の世界は酔うほどに、長々と続いた。
さらに進み、見えて来るのは風がいつまでも吹き続ける自然に満ちた場所、アネモイ国。そこでは風の神の集団が、世界に風を吹き込んでいる様子がしっかりと見える。
そして......ようやく見えて来た場所。
アムール国。ここは、何処の視点から見ても平和そのものだった。綺麗な草原や楽しそうに子供達がはしゃぎ回る噴水広場。何処を見渡しても、神々達は笑顔が耐えなく、平和な様子が見て取れる。
「アムール国へ、ようこそ。ジュノ様」
サンは、案内係の様な口調でそう言った。
ジュノは目を輝かせ、窓の外を見詰めた。
飛空艇は段々、空から地上へとゆっくり下がっていく。そして、さらに目の前に広がった美しいアムール国に思わず、声を失った。
サンは、上手く操縦をして飛空艇を地上に着陸させた。
そうして、二人は飛空艇から降りるとヴィーナスに仕える巨大な蛇、ダが待ち構えていた。