専務が私を追ってくる!
入社から約4ヶ月経とうという3月末日、私は社長直々に呼び出された。
「失礼いたします。お呼びでしょうか、社長」
社長室に入ると、社長の雨宮卓(あまみやすぐる)氏と社長秘書の園枝康祐(そのえだこうすけ)氏が私を迎えてくれた。
ダークなインテリアでまとめられている社長室は、少し怖い。
「美穂ちゃん。どうぞ座って」
「失礼します」
社長がそう言うので、お言葉に甘えてソファーに腰を下ろす。
彼らはピカピカのテーブルを挟んで向かいに座った。
何か重要な話があるのだと察して緊張感が増した。
「郡山さんに、折り入ってお願いしたい仕事があります」
口を開いたのは「冷徹」という言葉がピッタリの園枝さんだった。
社長はいつもフレンドリーでにこやかなので、左右の温度差で社長室の空気が対流している気がする。
「何でしょう」
遠慮がちに問うと、園枝さんはメガネをクイッと上げた。
「今日から新しくいらっしゃる専務の、専属秘書です」
ドクッと心臓が跳ねた。
「秘書……ですか」
「郡山さんは秘書の経験がおありでしたので、適任かと思いまして」
園枝さんは淡々と告げる。
言えないけれど、正直、やりたくない。
せっかく新しい仕事で今までと違う自分を演出できていたのに、前と同じ仕事をするなんて、自分が戻ってしまいそうで怖い。