専務が私を追ってくる!
修と付き合うことになって、数日。
私はずっと気になっていた修のお見合い相手……いや、元カノの写真を見せてもらった。
「清楚」を具現化したような美人だった。
メイクは控えめに見えるが、施してあるとわかる程度には色づいている。
黒髪はゆるふわのボブスタイル。
写真ではベージュのスーツを身に纏っている。
多少はプロの修正が入っていることを考慮しても、美しいと思った。
修と付き合っていた高校時代は、さぞかし可愛かったことだろう。
釣書によると、お名前は長部由香(おさべゆか)さんとおっしゃる。
県内では大手の建設会社、長部建設のご令嬢で、彼女の父親はN市アーケード街の自治会への強い発言力があると、わざわざ奥様が付箋に書いて貼り付けていた。
これ以上の人はいないのではないかというくらい、修にピッタリの女性である。
これほどの女性が30になっても独身だなんて、何か原因があるのでは?
というのは勘繰り過ぎだろうか。
「心配しなくても、見合いはしないよ。ちゃんと断った」
修は私の手から写真と釣書を奪い、ササッと封筒に戻す。
今カノに元カノを見られるのは、やっぱり恥ずかしいようだ。
「あの奥様が簡単に諦めるとは思えないけど」
私がカマをかけるつもりでそうぼやくと、修は頬を膨らませる。