専務が私を追ってくる!

「会社ですよ、専務」

そう言いながら、私の手は勝手に彼の背中へ。

「今だけ」

「……もう」

白いシャツにファンデーションやリップがついたりしないよう、気をつけながら抱き合う。

ふと思い出した。

『君の彼にも頑張るように伝えといてね』

「ねえ、そういえばふくしゃちょ……」

コンコン

ノックの音に、私たちは条件反射で体を離す。

「はい」

私が応えると、ガチャッと勢いよく扉が開く。

「準備できたか、修」

社長だ。

「ああ、もう出られるよ」

「園枝くんが車を出してくれる。行くぞ」

「はい」

キャリーケースを引き、歩き出す。

副社長のこと、聞きそびれちゃった。

「行ってらっしゃいませ」

「行ってきます」

ふたりはピリピリした雰囲気で、専務室を後にした。

< 198 / 250 >

この作品をシェア

pagetop