専務が私を追ってくる!
「会社ですよ、専務」
そう言いながら、私の手は勝手に彼の背中へ。
「今だけ」
「……もう」
白いシャツにファンデーションやリップがついたりしないよう、気をつけながら抱き合う。
ふと思い出した。
『君の彼にも頑張るように伝えといてね』
「ねえ、そういえばふくしゃちょ……」
コンコン
ノックの音に、私たちは条件反射で体を離す。
「はい」
私が応えると、ガチャッと勢いよく扉が開く。
「準備できたか、修」
社長だ。
「ああ、もう出られるよ」
「園枝くんが車を出してくれる。行くぞ」
「はい」
キャリーケースを引き、歩き出す。
副社長のこと、聞きそびれちゃった。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
ふたりはピリピリした雰囲気で、専務室を後にした。