専務が私を追ってくる!

長部家との会食のことなど一言も発さない修。

心の奥にいる嫌な私が、急騰したように暴れ始めた。

理性で押さえ付けていたそれが、今日はもう手に負えない。

「帰っていらっしゃらなくて結構です」

『え? ちょ、なんで?』

「今は専務が何をおっしゃっても、信じられませんから」

『美穂……もしかして、聞いたの?』

「何をです?」

『俺と、由香のこと』

由香。

わざわざ下の名前で呼んでるのを聞かせないでよ。

ムカつく。イライラする。抑えられない。

「ええ、うかがいました。ご結婚されるんですってね。結納と挙式のお日にちは無事に決まりましたか?」

『美穂、ちょっと落ち着いて』

「幸い今はあなたの荷物もほとんどありませんし、どうぞご自宅に帰られてください」

『美穂! ちゃんと会って話を——』

ポチッ。

堪えられずに電話を切った。

あんな嫌味を言いたかったわけじゃない。

結婚なんてしないよと言ってほしかっただけなのに。

不安がどんどん私をねじ曲げていく。

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