専務が私を追ってくる!

互いにビビりながら、出発進行。

私は大冒険に出るような気持ちだった。

頭の中ではCMでよく耳にするロールプレイングゲームのバックミュージックが流れている。

そのうち不気味に笑う半液体のモンスターが現れるのではないだろうか。

その場合はどうすればいいのだろう。

▼たたかう

▼じゅもん

▼にげる

▼どうぐ

うん、逃げよう。法定速度内で。

「次の信号を右に曲がるから、右折レーンに入って」

「はっ、はい!」

左から男の声が聞こえるというのは、変な感じがする。

これまでに男とドライブを楽しんだことは幾度となくあったけれど、私は一度もハンドルを握ろうとしたことはなかった。

女は助手席が当たり前だと思っていた。

本当にお高く止まっていたんだな、私。

せめて「疲れたら代わるよ」くらい言えなかったのか……。

だから運転免許を取得して10年、この土地で軽自動車を買うまで、ほとんど運転席に座ることはなかった。

もしいくらか運転に慣れていれば、今こんなに怖い思いをすることもなかったのかもしれない。

「ここからしばらくは直進」

そう告げたタイミングで、修は後部座席の方に置いていたカバンを助手席へ手繰り寄せた。

中から学生が使うようなノートを取り出してパラパラ目当てのページをめくり、ジャケットの内ポケットからペンを抜いた。

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