専務が私を追ってくる!
標識柱の看板は丸形。
色で三層に分かれており、上部は緑地に白抜きで「東峰バス」の社名、中部は白地に黒でバス停名がそれぞれ丸ゴシックの字で書かれている。
「S市のどちらに向かうんですか?」
「とりあえず、路線コースの終点まで。早いうちに一度、全路線のコースを巡りたいんだ」
「全路線ですか?」
それって一体、どれくらい時間がかかるのだろう。
きっと今日中には終わらない。
私、その間ずっと運転するの?
少しだけ慣れてきたけれど、まだまだ怖い。
「そう。バスのこと何も知らないで専務なんて名乗れないからね」
「私、本当に何も知らないのに秘書でいいのでしょうか」
「そりゃあダメでしょ。だからこそ、郡山さんを誘ったんだよ。お互いに新人だからね」
東京から出てきたばかりで、バスどころかこの土地のことすら何も知らない。
越してきて4ヶ月以上経つが、自分の生活圏外へ出る機会はあまりなかった。
車に乗って通ったことくらいはあるが、右も左もわからない。
この土地のこと何も知らないのに専務秘書だなんて、名乗れない。
「ありがとうございます。勉強になります」
怖いけれど、今日は頑張って運転しよう。