専務が私を追ってくる!
「他の人には見せられないけど、郡山さんならいいよ」
「私だけですか?」
「うん。郡山さんは俺だけの秘書だからね。社長も言ってたけど、会社には俺が専務をやるのを良く思ってない社員が少なからずいる。情報が漏れて弱みを握られたり、仕事を潰されるのは、わりとマズい」
あの日階段の踊り場でコソコソ陰口を叩いていた人たちの顔が頭に浮かぶ。
「そうですね」
彼らは役員ではないからすぐに脅威になったりはしないけれど、部長クラスの社員が一人でもその気になったら、修はかなり足を引っ張られることになるだろう。
修は社長や副社長と違って、専務など名ばかりで生意気な新入社員。
一睨みで言うことを聞かせられる威厳も圧倒的な支持もない、危うい立場にある。
私も気を引き締めて勤めないといけない。
社長は事務と変わらないと言っていたが、それは仕事内容だけで、降り掛かってくる責任や圧力は比べ物にならない。
私は唯一の専務秘書なのだから。
「したがってこれを読むってことは、絶対俺の味方でいるってことだからね」
スッと、閉じられたノートがケーキの皿の横に差し出される。
手はまだ置かれたままだ。
「はい。約束します」
私がこくりと頷くと、彼の手がスッと引いていった。
ノートを手に取ると、物理的でない重さを感じて気が引き締まった。