専務が私を追ってくる!



私たちがN市内を通る全てのコースを巡り終えると、時刻は午後9時を回ってしまっていた。

田舎の夜は暗い。

街灯のない道さえあるし、そこを人が普通に歩いていたりする。

山道だと人が急に現れるからビックリするし、黒っぽい服を着ている人なんかは本当に見えなくて怖い思いをしたりする。

最も恐ろしいのは、野良猫や狸やイタチの類い。

やつらは問答無用で飛び出してくる。

地方の夜は、都会とは違う意味でデンジャラスだ。

「疲れたでしょ。運転変わるよ」

「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ」

ずっと運転していたからか、この車の扱いにも大分慣れた。

「俺ももうノートは書かないし、助手席でゆっくりして」

「では、お言葉に甘えて」

運転を代わって、いったん背骨を鳴らしてから助手席に座った。

ジャケットを脱ぎ、慣れた手つきで座席を調節する修。

パネルのディスプレイが発する光が彼の横顔を照らして、あの日一目惚れしたのと同じ横顔が蘇る。

ジロジロ見ると不審がられるだろうが、チラ見程度には楽しめる。

もし私がこの土地に来なかったら、彼がここへ来るまでの4ヶ月間は付き合ったりできたのだろうか。

仕事ではなく、ちゃんとしたドライブデートができたのだろうか。

修はあの夜のこと、どう思っているんだろう。

それとも、もう忘れてしまっただろうか。

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