専務が私を追ってくる!
「じゃあ、好きな人は?」
「いません」
あえて挙げるならあなたです。
プライベートのことなんてほとんど聞いてこなかったのに、急にどうしたのだろう。
一応仕事が終わってオフタイムだからだろうか。
それともこの地味女に興味が湧いたとか?
いやいや、そんなまさか。
修は私を不満に思っているはずだ。
「メイクしないの?」
「軽くしています」
ファンデとアイブローだけだけど。
「もっとさ、なんていうの? メイクしてますーって感じのメイクだよ」
「ナチュラルメイクはお嫌いですか?」
「そういうわけじゃないんだけど。女って、アイシャドーとかアイラインとかでガラッと顔が変わるんでしょ? メガネもコンタクトに変えたりするといいんじゃない?」
なるほど、見えた。
地味な私を教育して、華やかな秘書に仕立て上げるつもりらしい。
もっと美人な秘書がいいと言ってた。
それに近付けようとしているのだ。
「生憎ですが、私は今のままがいいんです」
コンタクトにしてアイメイクなんて始めてしまったら、あの日と同じ顔になってしまう。
あなたじゃなければそうしてもいいけれど、相手があなただからいたしません。
修は納得いかない表情だ。