専務が私を追ってくる!
考えがそこに到達すると、次に導かれる答えは明白だ。
「自分を変えなければ」
しかし、28年もの間、必死で構築してきた郡山美穂(こおりやまみほ)という人間は、生まれ育った東京に根を張りすぎていた。
私を取り巻く環境が嫌な私に馴染みすぎていて、自分を簡単には変えられなかったのだ。
悩んでいた頃、元気だった母方の祖母が、突然亡くなった。
すると、母方の親戚が空いてしまった実家をどうするかということで揉め始めた。
祖母の子供は女ばかりで、各々県内外に嫁いでしまっている。
家は15年前にリノベーションしたあと祖父母がキレイに使っていたから、取り壊すにはもったいない。
誰かに貸すなら畳や板を張り替えた方が良さそうだが、誰が金を出すのか。
残っている家電もまだ使えるが、処分するには金がかかる。
面倒だから手放すのも手だが、実家がなくなるのは寂しい。
通夜、母と叔母たちは祖母の遺影の前でグダグダネチネチ揉めた。
私はそこでひらめいたのだ。
これは祖母が私にもたらしてくれた、千載一遇のチャンスかもしれない。
「だったらあの家、私にちょうだい」
私の言葉に親戚一同は驚いていたが、以降は何もかもがスムーズだった。
しばらくして会社を辞め、一夜の恋に溺れ、飛行機に乗って。
とある西の県、N市にて、私の新生活は幕を開けた。