雨のち晴れ
向き合うこと


**向き合うこと**


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「もう、お二人の関係って何なんですか〜?」

ある日の昼休み。

大学内にある食堂の陽当たりがいいところで、お昼ごはんを絵里ととっていた。

こんなところで食べるのも初めてだった。

いつもは教室で食べるのがほとんどだったから。

そもそも事の発端は、さっき構内で絵里に捕まってしまったことである。

「あ、紗子先輩!お昼ごはん一緒に食べましょ〜!」と、絵里は一緒にいた何人かの女の子達に断って、私をぐいぐいとここへ連れてきた。


「そんなことより、絵里、良かったの?友達と約束してたんでしょう?」

「いいんですよ〜、あんなの上辺だけの友達です。」

可愛い顔してけっこう黒いことを言う絵里、でも時々悲しそうな表情をするのが見逃せない。


絵里は辺りをキョロキョロとして、身を乗り出し声を潜めて話し始めた。

「女友達なんて本当に面倒でしかないですよ。何をお互いに張り合ってるのか分からないですけど。ニコニコしながら、実は裏じゃ悪口のオンパレード。噂話が好物ですからね〜!」

はぁーとため息をつく絵里。

「その点、紗子先輩は違います。初めて会った時からそうでした。自分を飾ってなくて素で。だから絵里、紗子先輩のこと好きなんです。」

「それは、どうも。」

「絵里、彼氏さんと紗子先輩がいれば十分です。」

そう言って笑った絵里の笑顔は、先ほどまでの作り笑顔には見えなかった。

その笑顔を見て、絵里のこと、なんだかんだで私も好きなのかなぁと思う私だった。



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