美狐はベッドの上で愛をささやく

それはわたしだけじゃなくって……。


周りからも、チクチク突き刺さる視線が痛い。


男の人とか、女の人とか関係なくって、周りの人たちがみんな紅さんに釘づけだ。


そんな彼だから、見窄(ミスボ)らしいわたしと一緒にいるっていうことが、みんな不思議なんだと思う。




……うん、そうだね。

わたしも、そう思う……。


だから今日だけ。

今だけだから……ごめんなさい。


どうか、どうか許してください……。



心の中で謝って、紅さんの顔を見上げた。


「だっ、大丈夫です!!」


紅さんと繋いだ手から、じんわり汗が出てしまうのは、見つめられると心臓がドキドキして緊張するから……。



恥ずかしくって……苦しくって……でも、それだけじゃなくって……。





「上映時間は4時だから、どこか休める場所に行こうか。

もうすぐ3時前だけど、お腹はすいた? 何か食べられそう?」


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