美狐はベッドの上で愛をささやく

これで最後なんだと思えば、とても苦しくて……。


とても悲しくて……。



胸が、張り裂けそうに痛い。




それでも、わたしはみぞおちに溜めていた霊力を彼に送り込みはじめる。


彼の傷が早く治るようにと祈りながら――――。



わたしの霊力を、みぞおちから胸へ、そして両手を伝って、彼へと注ぎ込んでいく――。



柔らかな淡い光がわたしの腕を伝って、やがて彼の全身を包みはじめる。




よかった。

こんなわたしでも、なんとかすることができるんだね。


彼の顔色がさっきよりもほんの少し良くなっている。




あと少しだけ……。


もう少し、この人の傍にいたい。




そう願った直後、ピクリとその人の指が動いた。




まずい、彼が目覚めてしまう!!


わたしは急いで近場の窓から飛び降りた。






……ふわり。



地面へとうまく着地すると気配を消して、草陰に隠れる。


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