美狐はベッドの上で愛をささやく

わたしは、少しずつだけど、着実に霊力を使いこなせるようになっているんだ。




……ガラッ。

わたしが草陰に着地したと同時に、さっき飛び降りた2階の部屋から窓がひらく音がした。


緩やかな赤茶色の髪が風になびき、さっきまで青白かった顔は少し赤みが戻っている。


とはいえ、ガウン越しからでもわかるくらい、体は細い。



彼の目は、銀色の――実体化した狐の姿をした時と同じ真紅だ。

それは、彼がかなり弱体化していることが窺(ウカガ)える。


彼のその目が、何かを探している。

目を窄(スボ)め、周囲を見回していた。



もしかすると、わたしの存在に気が付いたのかもしれない。




今、貴方の前にわたしが現れたら、貴方はどんな顔をする?


わたしを汚らわしいと、そう言うだろうか。


それとも……。

以前のように、わたしを優しく包んでくれる?



優しい彼だもんね。


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