不機嫌主任の溺愛宣言
「忠臣さん!」
一華の胸が感激と安堵で熱くなる。
――本当に助けに来てくれた。一言叫ぶことしか出来なかったあの電話から、ここを見つけて……本当に駆けつけてくれた。
見開いた一華の目に映った忠臣は、いつも綺麗にアップバングにしてある髪を乱し、額から汗を幾筋も流していた。彼がどれだけ急いでここへ来てくれたかが手に取るように分かる。
その姿に、一華の胸が詰まって目頭が熱くなる。
忠臣は加賀の腕を捻り上げ、その卑しい巨体を一華から引き剥がした。
「加賀、お前のやってる事は立派な犯罪だ。このまま警察に突き出してやろう」
スクェアフレームの下から厳しい眼差しで睨みつけると、加賀は自分の置かれてる状況が非常にまずい事を察し顔色を変える。
「ひっ、…ひぃぃ!」
すっかり怖気づいた加賀は忠臣に掴まれていた腕をふりほどくと、その場から逃げ出そうと路地裏から大通りへ走り出そうとした。
しかし、運の悪いことにその進行方向にはちょうど立ち上がったばかりの一華が。
「く、くそぉ!どけ!」
「きゃ…っ!」
ほうほうのていで駆け出した加賀は、目の前にいた一華を思い切り突き飛ばした。固いコンクリからようやく立ち上がったばかりの彼女は脚に力が入っていない。加賀に力任せに突き飛ばされた身体が、そのまま勢い良く電柱にぶつかろうとした時だった。
「一華!!」
ガンッ――と鈍い音は、一華の後方から聞こえた。
「た、忠臣さん!?」
咄嗟に身体を一華と電柱の間に入り込ませ、身を挺して彼女を守った忠臣は、その勢いごと受けとめ頭を強く電柱に打ち付けた。
「く……っ」
呻く声を零しながら忠臣の身体がズルズルとその場にへたり込む。
「忠臣さん!忠臣さん!」
その様子に一華は叫ぶように彼の名を呼び、加賀は顔面蒼白になりながらその場から逃げ去った。
「しっかりして忠臣さん!誰か、救急車を!」
夜の繁華街に、一華の悲痛な助けが木霊する。