不機嫌主任の溺愛宣言
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「脳震盪です。軽いものだとは思いますが念のため一晩入院して様子を見ましょう」
運ばれた病院で、忠臣はそう診断された。
付き添った一華は自分を守って負傷した忠臣がナースに手当てを受ける姿を眺めて胸をキリキリと痛めた。自分の発したSOSに応え、なんの躊躇いもなく身体を張って助けてくれた忠臣。そんな彼を今まで以上に愛しく思うからこそ、痛々しい姿が辛い。人一倍責任感の強い彼女の心をそんな罪悪感が締め付ける。
宛がわれた個室の病室で、ナースが出て行きふたりきになると一華は、悲痛そうに顔をしかめて忠臣に頭を下げた。
「ごめんなさい忠臣さん。私のせいでこんな怪我をさせてしまって……」
普段は気丈な一華が今にも泣き出しそうな声で謝罪するのを聞いて、忠臣はベッドに横たわった姿勢のまま手を伸ばし、慰めるように彼女の髪を撫でた。
「謝る事はない。俺は当然の事をしたまでだ。それより、君が無事で良かった」
まだ怪我が痛むのか、どこか力なく、けれど柔らかに微笑んだ忠臣の顔を見て一華の胸がさらに苦しく詰まる。気を抜いたらこのまま彼に取り縋って泣いてしまいそうだ。
忠臣は病室に掛かっている時計をチラリと見やると、一華に伸ばしていた手を引いて彼女に告げる。
「あまり遅くなるといけない、君はそろそろ帰った方がいい。とは言え加賀が心配だな。出来れば今日はアパートでなく実家か友達の家にでも――」
忠臣がそこまで言いかけたところで、一華は引きかけた彼の手を握り首を横に振った。
「今日は帰りません。忠臣さんに付き添います。私のせいなんですから、付き添わせて下さい」
彼女の真剣な剣幕に、忠臣はわずかに目を見開いたあと表情に困惑の色を浮かべる。
「そんなに心配する事はない。それに一華が責任を感じる事などこれっぽっちもないだろう。君だって被害者なんだ」
けれど、納得するどころか一華はその言葉を聞いて、ついにぽろぽろと涙を零し出してしまった。