星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


「それじゃ、百花ちゃん。
 そろそろ息んでみようか」


先生のコールと同時に、力をこめはじめる。


誘導されるままに、何度となくその行動を続けていくと

「頭三分の一出て来たよ」

と言うふうに、先生が少しずつ状況を伝えてくれる。


私は言えば、先生のコールに誘導されるように
足を両手で掴んだまま、暫くいきみ続ける。





「はぁーい。百花ちゃん、OK。もう楽にしていいよ。
 はいっ、生まれた」



そう言った先生は、その後出産時間のコールを告げた。




初めて産声をあげた赤ちゃんは、
女の子。





すぐに赤ちゃんも何かの処置をされて、
私の傍へと連れて来られる。





「おめでとう、百花ちゃん・託実。

 元気な女の子ね。
 今日から、私もおばあちゃんか……」


そう言いながらお義母さんが、私に笑いかける。



「ホント、私たちお互い若いおばあちゃんよね。
 さっ、百花もゆっくりと休みなさい。

 外にいるお祖父ちゃんとお父さんに伝えてこないと」



そんなことを言いながら、お母さんは病室を出ていく。



託実は生まれたばかりの女の子を一度だけ抱きしめると、
病院のスタッフさんによって、
一度赤ちゃんは何処かへと連れていかれた。


「百花ちゃん、大丈夫よ。
 すぐに赤ちゃんも戻ってくるから」


お義母さんに促されるまま、
私はそのまま分娩の後の処置にうつり、
翌日の朝まで、ベッドの上の住人。




翌日からは部屋の中を歩けるほどに回復して、
お見舞いに来てくれた、家族や唯香、Ansyalのメンバー、宝珠さんたちと
普通に会話を楽しんだ。




皆が帰った後、
ベッドに座った私の隣に託実が腰掛ける。
 


「百花、昨日……マンションに戻った時に名前考えてみた」

「うん。
 託実はなんて名前に決めてくれたの?」




そう言って問いかけると、託実は黙ったまま四つ折りにされた真っ白い紙を
私の前に差し出す。


黙ってその紙を受け取って、ゆっくりと開くとそこには
満月【みつき】っと託実の字で綴られていた。





「亀城満月【きじょうみつき】?」

「満月【まんげつ】と書いて【みつき】。
 
 月は満ちたり欠けたりするものだろ。
 俺たちも此処に来るまで、やっぱり満ち欠けの時間を過ごし続けてきた。

 だけど満月が生まれて、満ち足りた。
 ようやく、本当の意味で家族が出来たように、一つになれたように思うんだ。

 百花の言う通り、理佳が帰って来てさ。
 だから……そんなこと思いながら、考えてたらこの名前しか思いしかなかった」




亀城満月。




託実によって、満月【みつき】と名付けられた第一子。
私たちの新しい家族。




満月の傍にも沢山の愛と絆が溢れますように。
そんな風に願い続ける、母となった私の最初の想い。








お帰りなさい……
私たちの大切なお姉ちゃん。



初めまして満月。
私たちの自慢の宝物。
  





これから沢山、大切なものを見つけようね。

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