泣きたい夜には…~Shingo~
電話を切った先生の顔からみるみるうちに血の気が引いていく。
額から汗が流れ落ち、ガタガタと全身の震えが止まらない様子。
いつも冷静な先生なのに、目に見えて動揺しているのがわかる。
香澄、って、確か妊娠中の奥さんだよな?
まさか…
「先生、どうかされましたか?」
先生は悪夢を振り払うように大きく首を振りながら、
「妻が…香澄が破水した。まだ7ヶ月だというのに」
言い終わらないうちに教授室を飛び出して行った。
破水って…
妊娠期間は十月十日(とつきとおか)。
知識のない俺だってそのくらいのことはわかる。
7か月では、まだ早すぎる。
「向井先生!!!!」
俺は向井先生を追った。
会社に戻らなければならないのはわかっている。
俺がいても何の役にも立たないことだってわかっている。
わかっているが、このまま帰ったらきっと後悔する。
そう思ったら体が勝手に動いていた。
.