泣きたい夜には…~Shingo~



車のドアロックを解除すると、ひとみは助手席に乗り込んだ。


マンションに着くまでの10分間、俺達は言葉を交わすことはなかった。


しんと静まり返った車内には重苦しい空気が漂っていた。


マンションに着くと、一旦自分の部屋に戻り、着替えてからひとみの部屋に行った。


部屋の中を漂うカレーの匂いは俺の食欲を刺激する。


「ごめ~ん!今日はカレーだけでカンベンして~!!」


ひとみは申し訳なさそうにテーブルにカレーを置いた。


「いいよ、疲れているんだし、一晩寝かせたカレーは昨日よりも美味いんだから十分さ」


そう言って食べ始めたのだが、重苦しい空気を払拭できぬまま、美味しいはずのカレーを味わうことはできなかった。


いつもだったら食事のこと、仕事のこと等、色々な話をしながら楽しい時間なのに。


食事を終え、一緒に後片付けをしていても会話が続かなくて、洗い物をする水音がいつもより大きく聞こえた。



.
< 112 / 156 >

この作品をシェア

pagetop