泣きたい夜には…~Shingo~
ひとみはフッと笑って窓辺に目をやると、
「守秘義務があるからはっきり言えないけど、向井の赤ちゃん、かなり危険な状態だったの。
でもね、必ず助けるって約束したからとにかく無我夢中だった。
後でわかることなのかもしれないけど、さっきこのことを言ってしまったら何だか恩着せがましい感じがして…言えなかった。ううん、言いたくなかった。
つまらないことなのかもしれないけど、私の医師としてのプライド…もう私は大丈夫なんだというところをあの人に見せたかった。ただそれだけのこと」
恐らく、向井先生がどんな気持ちで別れを告げたのか、今のひとみならわかっている…そんな気がした。
「お前、頑張ったな」
労いの言葉をかけると、ひとみは首を振って、
「まぁ、それが私の仕事ですからね」
そう言いながらもちょっと照れたような笑顔のひとみが眩しかった。
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