僕の幸せは、星をめぐるように。

「部外者のわたしが行ってもいいの?」


「大丈夫。文化祭前くらいしかまじめにやらないらしいし。だべり場所になってるから」


クラリネットやオーボエの音が鳴り響く階段を下り、1階の廊下を進む。


阿部くんが2歩足を進める時、わたしが3歩進むとちょうど一緒の距離になる。

でもそのスピードは、わたしに合わせて、ゆっくりにしてくれているようだ。


放課後の学校の雰囲気に慣れていないわたしは、

たぶん1歩足を進める度にいつもより1.5倍、いつもとは違う空気を吸い込んでいるような気がした。


「こっち」


校舎を出て、第2体育館に続く渡り廊下を右にそれると、すのこでできたもうひとつの道があった。


「こんなとこあったんだね」


「校舎に近いと、特進コースの勉強とかの邪魔になるからだって」


「へー」


砂利の上に直接すのこが置かれていて、歩くたびにしゃり、しゃりと音が鳴る。


複数のすのこが繋がって道になっているため、

上履きのまま外に出ても、土足にならないようになっていた。


第2体育館と格技場の間を進む。

それらの建物から、ボールが重くバウンドする音や、竹刀を打ち合う音や声が聞こえてきた。


何だろう、この気持ち。

むかし学校の裏山で作った秘密基地に向かうような、そんな感覚。


そこから10メートルほど進むと、古ぼけた黄土色の壁の倉庫が見えた。

ここが軽音楽部の部室らしい。
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