僕の幸せは、星をめぐるように。
校門を出ると、1人でスマホをいじっている長距離チームの先輩の姿が見えた。
「あ、うち先輩待ってるから、じゃねー」
わたしたちの輪の中から、1人の女子が走ってそこへ向かう。
へ~。部内で付き合っているカップルもいるんだ。
「トシミちゃんも彼氏いるんだべ? いいなぁー!」
「えぇえ!? その……ね! 自分でもびっくりだ~!」
突然の振りにドキッとするわたし。
「しかもあの阿部ちゃんだよ! 超優しそうでね?」
とナナミちゃんが補足する。
「ねー! かっこいいよね。ちょっと線が細い感じだけど」
「おめぇはガチムチ系が好みだからだべや」
「んだ、筋肉最高ー! あーあ。コーチ、彼女さんと別れてくんねーかなぁ~」
恋バナで盛り上がりながら、わたしたちは再び雪の上を歩き出した。
会話の隙間、こっそりとナナミちゃんに「で、えっちした?」と聞かれたため、
「まだですからー!」と必死で顔の前で手を振っておいた。
ふ、ふう。
恋バナも結構カロリー使うんですね。
そう思いつつ、引き続きみんなで盛り上がっていたが。
「あの、トシミちゃん……」
誰かに名前を呼ばれたため、わたしは急いで振り返った。
そこにいたのは、1人の背の高い女の子。
上にはキルティングのコートを羽織っているけど、
そこからわたしたちと一緒のスカートが見えるので、同じ学校の子だろう。
「ちょっとだけいいかな?」
その子は、黒いロングヘアを風に揺らしながら、気まずそうな顔でわたしに話しかけてくる。
ひそひそとまわりの部員たちから
「この子、確か6組の……名前何だっけ?」という声が聞こえてきた。
えーと、誰だろう。
――あ!
わたしは思い出した。
この子、同じ中学だった。
そして、同じ部活だった女の子だ。