僕の幸せは、星をめぐるように。
阿部くんがその重たそうな扉を横に開けた。
手前には、楽譜らしきものが詰め込まれた本棚、CDラジカセ、パイプ椅子などが適当に並べられている。
そして、奥側にはドラムセットやアンプが置かれていて、バンド練習ができるようなスペースになっていた。
ちーっす、と挨拶しながら阿部くんがその中に入ると、ロックっぽい音楽が流れる中、
パイプ椅子の上で胡坐をかき、漫画を読んでいるパンク頭の男子生徒がいた。
そのパンク頭はわたしの姿を見ると、軽く会釈をした後、再び漫画の世界に戻っていった。
「散らかってるけどそのへん適当に座って」
阿部くんがそう言うので、
とりあえずあまっているパイプ椅子に座ってみた。
するとその正面の椅子に阿部くんが座った。
「この曲格好良いね! 何てバンドのやつかな」
BGMは、激しい演奏に女子ボーカルのポップなメロディが特徴的な音楽。
初めて聞いたかも。
阿部くんに聞いたつもりだったけど、
「スターフィッシュってバンド」
とパンク頭の男子が漫画を見ながら答えてくれた。
「へぇ~。ありがとうございます」
「うっす」
お礼を言うと、パンク頭もつんつんした頭を揺らして会釈をした。
そして、パンク頭くんは漫画を鞄に入れ、阿部くんの肩にポンと手を置き、部室から出て行ってしまった。
あれ? 追い出しちゃった感じかな……?