僕の幸せは、星をめぐるように。


心配していると、

「大丈夫だよ、あいつそろそろバイトの時間だし」

と阿部くんがスマホをいじりながら、わたしに言った。


「ええ? うちの高校バイト禁止じゃん」


「まあまあ、先輩たちからいろいろ裏ワザ教えてもらってるから」


へぇ~。なんだろう裏技って……。


そう思っていると、阿部くんはゆっくりと口を開いた。


「そういえばトシミちゃんと2人きりで話したことなかったね」


「んだよね。たいがいクニオのヤツがうっさいし。阿部くんってあいつと仲良いよね。ぜんぜん性格合わなさそうなのに」


「うーん。あいついいやつだし、面白いじゃん。おれ、あんなに天性のバカ見たことないし」


この狭い室内に2人きりなのに。


低くもなく、高くもなく、ボソボソとつぶやくように話すその声は、

鼓膜だけではなく心の中をも優しく揺さぶるようで、とても心地よかった。


その声で『天性のバカ』という言葉を発するのも、ちょっとシュールで面白かった。


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