僕の幸せは、星をめぐるように。
「阿部くん、何か楽器やってるの?」
奥の練習スペースに置かれたドラムセットや、立てかけられているギターを見ながら、わたしは聞いた。
「まあ、ベースをちょっと。文化祭まで活動予定ないし全然やってないけど」
「へぇ! すごーい! 文化祭楽しみ!」
わたしが大声を出すと、声が部室内に響いた。
阿部くんはそんなわたしを見て、たいしたもんじゃないよ、と言って、静かに笑った。
「阿部くんって宮沢賢治とかロックとか、いろいろ趣味があってすごいね」
「そう? ただミーハーなだけ。トシミちゃんは?」
「わたしは特に。だから、何かうらやましいな~」
「じゃあボーカルでもやってみる?」
「無理無理! わたし歌下手だし」
そういえば、そういうバンドもののケータイ小説読んだことあるなぁ。
「あ、そうそう。別に賢治記念館にいたこと内緒ってわけでもないんだけど。あんまり皆行かないの?」
と阿部くんは首をかしげながら言った。
「うーん。ま、何か逆に身近すぎるっていうか。ってかもう記念館とか童話村とか幼稚園か小学校の時に遠足で行ったし」
「そうなんだ」
「だから、まさかあそこでクラスの男子に会うとは、と思って、ちょっと不思議な感じした」
あ、よく考えたら、阿部くん別の県から来たんだっけ。
それを思い出し、あっ、と声をあげそうになると、阿部くんはふふっと軽く笑った。
「おれは、トシミちゃんがおれの趣味笑わないで聞いてくれるの嬉しいよ」
ちなみに、クニオにはミヤケンマニアと言われたらしい。
はんあぁ~、あのバカ! と思っていると、
ま、いいんだけどね、と阿部くんは付け加えた。